中 村 豊 の 花 器  

花は、自然界にある姿が
いちばん素直で美しい

そのもともとの姿を生けられるよう
どこからも使ってもらっていい。
立てても横にしても  
裏返しでも生けられる

 
多くを受け入れてこそ 
本来の花器の姿であり心である

白釉重ね形花器

一器三用の花器
左の花器の全面を
下にした時と上にした時と
三様に表情を変える

中村豊は、器の空洞という
見えない部分に深い思索を重ねる

彼の作る器は、四角くても三角でも
中に何かあるようにふくらんでいる
そのふくらみが優しく温かく
心地よい

中村豊は「中にあるのは心」
としかいわない

器の空洞
土と水と炎によって生まれる器
その聖なる空洞に花を捧げる
白は無一物
その裏に、その奥に色
土は黒く無彩色
還元炎の輪廻の色
白釉の隙間から還元黒の土肌
陶 杉 窯(すえすぎがま)
「越前の地に脈々と流れる越前焼の
歴史と風土があって初めて、
現代の私のやきものが生まれる。
土が私の表現を引き出し、
炎が私の力を超えたやきものを
生み出してくれるのです」
やきものは神に捧げる器、「陶器(すえき)」です。
本来、神に花を捧げ、供物を供えるための器でした。
より神に近い存在として、器の内にある空洞に、
人々は祈りや願いや畏れをも込めてきた・・・
越前焼発祥の地に1972年に開かれた越前陶芸村に
中村豊は開村時から参加し、陶杉窯を築きました。
越前大壺

「越前に住んでいるから自然と
紙に興味をもってね。最初は
牛乳パックや手提げの袋を焼物
で作るところから出発しました

中村は伝統に準じて作った器を
「花生(はないけ)」といい、
オリジナルを「花器」と
区別して呼ぶ。
中 村 豊 の あ か り

中村豊は陶芸家である。
がしかし、中村豊の作る
ものは陶器だけではない。

越前の伝統和紙を使い
「あかり」を作る。

土で紙製品をかたどるうち
逆に、和紙の繊維を立体の
素材にできないかと考え、
ユニークな「あかり」作品が
生み出された。

山藤の蔓を枠にしたあかり
  ユニークな形は
手術用のゴム手袋
金網を骨にしたあかり
荏胡麻油で仕上げる
藤蔓枠のあかりは
時に思いがけない
光の発散を生む
参考:『花時間157号』『太陽1999年2月号』掲載記事
陶杉窯はポストも陶製
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中村 豊 陶歴

陶杉窯の広い庭で摘んだ薊(あざみ)を
数輪、「白釉円錐花器」に

右の高い「白釉細長筒花器」は
上下を逆にしても花を生けられる。
左は「足付白釉三角花器」

三角を重ねた安定感のある
「白釉三角Vの花器」に
小ぶりの紫陽花が可憐です

「中村豊・越前のあかり展」出品作品
2000年京都高島屋にて開催
多面的多用途の器のかたち 

生け花文化を
伝統(華道)として
受け継がれているのは
日本だけだと思います。

器は使い手の工夫と
アイデアにより
初めて作品として完結し
空間を演出します。
いけ花文化が
伝統(華道)として
受け継がれているのは
日本だけだと思います。
最後に付けた指の跡が力強い
      「黒釉角手付花生」