私の穴窯は30年程前に自分で作った窯で、以後改修を加えながら使っ
てきました。ガス窯や電気窯では焼き手の意志ひとつで瞬時に、温度や
窯内雰囲気を変えていけますが穴窯ではその図体が大きいこともあって
作業結果が1時間以上後になってから分かってくるという反応ぶりです。
また穴窯は焼成と徐冷に時間がかかります。私の場合5日間位焼きま
すので灰がよく飛んで自然釉がかかりやすいという利点にもなります。
徐冷は焼いた日数だけ冷ますというのが原則ですが、私の場合は灰を
技法に使うためにさらに長く時間をかけて冷ましています。それが越前
焼独特の渋い落ち着いた焼き味になります。
穴窯の下に、ロストル(焚き口の目皿)をつけて灰を落とし、溜まっ
た灰(燠・おき)を二度焼きのために利用して「燠埋み(おきうずみ)」
の技法として使っています。
越前 西浦武の穴窯(あながま)
碧砂釉・へきさゆう
穴窯で5日間かけて焼き上げた作品に
さらに素地土以外の土(鉄分含有量の
違う土)を泥掛けし、再び同じ期間を
かけて二度焼きします。長期間による
焼成のために、窯の中で土が化学反応
を起こし、美しいブルーや茶色などの
色彩が流れるように現れます。
このように制作したものが「碧砂釉」
です。
穴窯で5日間焼き上げた後、窯の前の
灰の溜まる場所に作品を並べ、溜まっ
た燠(おき)に埋もれさせた状態にし
ます。このようにして焼き上げると、
燠の中で蒸らされることになり、独特
のかせた景色が「侘び・寂」の雰囲気
を醸し出します。
燠埋み・おきうずみ
穴窯の内部