作陶への思い  <土変成陶>

 幼少の頃より、物を作り出すことに魅力を
感じていた私は、1968年に侘びた信楽焼の古
い壷と出会い、それが私にやきものの世界
生きて
いく決心をさせました。


 そして、1974年に大徳寺の立花大亀老師と
の出会いによって、私の作陶活動と人生に大
きな方向付けの転換がありました。ご老師の
中に利休の姿を見、やがて茶の湯においても
やきものにおいても、「自然であること」が
大切であるということを教えられたからです。

 それはありのままの自分が一番いい。うまく作りたいという欲をなくしたい。
タンポポや野の花のように命の赴くままに作陶できればいいと。
 それはやきものにおいては、土の持つ個性をそのままに引き出してあげること
なのです。土であるから捲れたり割れたりする。もちろんそれぞれの質も変わる。
それを生かして土を喜ばせてあげることが深い味わいをもたらすのです。

 私の師、大亀老師は陶芸家ではなく茶人ですから、一つのものにこだわらずに
いろんな土と語り合うことの尊さを教えてくれました。

 また茶の湯の文化においても「自然であること」が利休の思想だといわれます。
茶の湯が集大成された桃山という時代は、千利休をはじめ古田織部や本阿弥光悦
など、茶人で優れた思想家が生まれた時代です。

 日本の美術品のうち茶の湯の文化の中から生まれた美術品は数多くあります。
それらは桃山時代に集結しています。よって大亀老師は桃山に帰れといわれます。
その大亀老師の教えが私の作品に対する思いです。

 偉大な桃山の茶の湯の心を現代につたえることは容易なことではありませんが、
「桃山に帰れ」の作陶精神で日々精進しております。




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